【創業100周年記念展】矢代仁
矢代仁とは・・・
【矢代仁:御召とともに歩む伝統と革新】
享保5年(1720)に創業し、今年で305年を迎える矢代仁は、京都室町二条の地にて元祖誉田屋庄兵衛が呉服商として始業。西陣織着尺や白亀綾縮緬をはじめとする日本の伝統的な染織品を扱い、その高い技術と美意識で歴史を刻んできました。
戦後、「御召」の需要が減少する中、時代のニーズに応じて友禅染への注力を開始。
しかし、矢代仁の根幹には「慎みて祖業を堕すことなかれ」という家訓が息づいています。これは、祖先が築いた伝統の品格を守りつつも、“日に新、日々新”の精神で新たな美を追求するという矢代仁の理念を表しています。
【御召への思い】
また、「御召」という織物に込められた矢代仁の思いは深く、捻(より)をかけた緯糸を織り上げることで生まれる独特の絞(しぼ)の美しさや繊細な技術への誇りは今も変わりません。
御召はかつて晴れのきものとして愛され、江戸時代の将軍や宮中を魅了した逸品です。その文化的価値を次世代へ伝えるべく、矢代仁は常に御召を中心とした感性や技術を磨き続けています。
【丸や呉服店との繋がり】
昭和28年には、丸や呉服店創業者・谷博義が、「失われつつある日本の染織物文化を後世に残す」という強い信念のもと、蒐集した御召の裂地を中心に1700点にも及ぶ膨大な資料を昭和58年(1983)に、株式会社矢代仁に寄贈。
この絹裂地コレクションを基に、御召の復刻事業を平成20年(2008)頃から開始しました。
集められた布たちは、戦災や洋装化の進展によって消えつつあった染織文化を記録し、未来へつなぐ貴重な財産となりました。その中には、西陣・桐生・十日町といった三大産地の御召や、現在では再現が難しい高度な技術で織り上げられた裂地が含まれています。
この功績は、御召の伝統技術を後世に伝える礎となり、祖父の着物に対する深い愛情と信念が息づいています。
祖父の代から深い関わりを持つ矢代仁は、「伝統の継承」と「革新への挑戦」を両輪に、日本の美意識を未来に残すための歩みを止めず、御召の持つ魅力を多様な形で表現しています。
現代の生活に新たな価値を生み出す挑戦を続けている矢代仁の作品の数々に触れていただけましたら幸いです。